流れ着いた旅。
目的地を決めずに出発した
光葉との当てのない日帰り旅。
糸島の海沿いの道を
唐津方面に向かいながら
ひとまずの目的地を
山頂からの棚田の風景や
名物・佐世保バーガーを楽しみつつ
208もの島があると言われる
「 九十九島 」全体が眺められる展望台へ。
ただただ、圧巻な景色。
九十九島について少しだけ調べた光葉が
「 この島のほとんどは無人島なんだって 」
ということと
島の歴史をひとつ教えてくれました。
「 隠れキリシタンが潜伏してたらしいよ 」
それを聞いて、腑に落ちたのでした。
うちらはなんでこの日、ここに来たのか。
真実はわからない。
たまたまかもしれない。
でも、そう信じることにしました。
7月の終わり頃
東京のサッカー仲間から
突然メッセージが来ました。
「 今朝8時ごろ
Kくんが亡くなりました。
先週の木曜日
会社で倒れて、意識不明のまま
今朝、息を引き取られました 」
何の予兆もなく突然に。
しかも、奥さんもいて、子供もいて。
胸が締めつけられました。
Kくんは
仲良くさせてもらっていた東京のチームで
指導者をしていました。
試合会場では
あまり一緒にならなかったのですが
そのチームの指導者が中心になって出場した
指導者大会でチームメイトとなり
厳つい外見とシャイな性格に隠された
優しさあふれる彼の熱い想いを知っては
仲良くなっていったのでした。
糸島に移住するちょっと前
指導者大会のオファーを
あらためてもらうことができ
Kくんと再びチームメイトになりました。
GKとして出場した彼はケガがありながらも
それを見せない積極的なプレーと
ポジティブなコーチングでゴールを守り
準優勝に貢献してくれたのでした。
チーム最後の
ミーティングが終わって着替えていると
Kくんが突然やってきました。
「 テツくん、これあげるよ 」
渡されたのは、映画のチケット2枚。
それは「 TOHOシネマズ 」であれば
どこでも、どんな映画でも
観られるというチケットでした。
「 糸島に移住する前に
もし時間があったら行ってみてよ 」
なんでくれたのかの理由は聞くことなく
「 ありがとう、必ず行くね 」とだけ伝え。
その数日後、光葉と何を観るかを考え
最終的にうちらが選んだ映画は
マーティン・スコセッシの『 沈黙 』でした。
佐世保への日帰り旅に出る2日前
Kくんについてのブログを書き始めたのですが
なぜだか書き進めることができず断念しました。
その後も進行することはなく
でも、ぼんやりとKくんのことは考えていて。
そして昨日、光葉と休みが合ったので
行き先を決めることなく日帰り旅に出かけました。
そこで行き着いたのは
映画『 沈黙 』の主題として描かれていた
“ 隠れキリシタン ” が潜伏していた
という「 九十九島 」。
真実はわからない。
たまたまかもしれない。
でも、そう信じることにしました。
きっと、Kくんが呼び込んでくれたんだ、って。
映画を観に行った後
『 沈黙 』を選んだことと映画の感想
それとあらためてのお礼をKくんにメールすると
彼はこんな返信をくれていたのでした。
「 キリシタンのやつだね。
なかなかマニアックだね(笑)
俺も見てみたいってちょっと思った ♪ 」
「 今度ゆっくり呑みながら
サッカーの話をしよう😄
奥さんも紹介してね ♪ 」
うん、また会おう。
たくさんの優しさを本当にありがとうでした。
『 耳が聞こえなくても
“ 聞こえる ” ことばであり
目が見えなくても “ 見える ” ことば
それが “ 優しさ ” というもの 』
マーク・トウェイン( 小説家 )