旅する天気。
「 そういえば最近まったく本を読めてないんだ。
本を読むといい感覚になるのはわかってるのに。
読む時間がないというより、
読む時間を作ろうとしてないんだよね 」
目覚めのコーヒーを台所で飲みながら、
光葉にそんな話しをすると彼女は唐突にこんなことを。
「 きっと本を読む天気じゃなかったんだね 」
この日は、
春の訪れを思い出させてくれるような天気、
理由もなく外に飛び出したくなるような、旅する天気。
午前中はうちで
光葉と他愛もない話しをしたり、
洗濯物を干したり、ブログを書いたり。
こっちに移住して知った
瓦そばをお昼に食べてから、ひとりで大濠公園へ。
向かったのは公園内にあるスターバックス。
池が目の前にある素敵なロケーション。
ゆっくり散歩をする親子、
ベンチで話すカップル、
おこぼれに預ろうとするスズメ。
ショットを追加したアイスのカフェモカは
甘さと苦さのバランス感がやっぱり好みで、
旅する天気のときには必ず飲みたくなるドリンク。
それをテラス席で。
選んだ本はしばらく読まずに止まっていた、
ミュージシャン ” 早川義夫さん ” の
名エッセイ『 生きがいは愛しあうことだけ 』。
「 演奏上手な人はいっぱいいるけれど、
美しいか美しくないかは、
透き通っているかどうかだ。
音に限らず、言葉、感性、
性格、思想においてもそうである。
透き通っている人が正しい 」
「 日常とステージが変わらず自然体だ。
考えてみれば、誰だって自然体である。
それしか出来ないのである。どう転んでも、
( 自分の )本当のことしか伝えられないし、
( その人の )本当のことしか伝わってこない。
自分のレベルでしか
ものを知ることは出来ないし、
自分のレベル以上のことは出来ない 」
「 音が出る一歩手前の沈黙。
音を出す一歩手前の息づかい。
それが美しいかどうかですべてが決まる。
音楽は音でもない、言葉でもない、
沈黙なのだ 」
とても解放的な気分で公園を散歩。
なんて幸せなんだろうか。
この瞬間が最高だと思えたら
それ以上のことはきっとない。
それを重ね合わせていけたら、
素敵な人生になっているんじゃないだろうか。
そのまま六本松駅まで歩き、
新しくできた「 TSUTAYA 」へ。
買わずに本が読めるあのスタイル。
キューバや南米の写真集を見てたら懐かしい感覚に。
混沌とした環境の中での混沌とした自分。
生きてる実感のある剥き出しの自分。素直な自分。
帰り際、フラッと近くの酒場に。
居酒屋より酒場という言い方が
しっくりくる大衆的なお店。
生ビールと日本酒を一杯ずつ。
とポテトフライ。
酒場ではなぜか
一番安い日本酒を頼んでしまう自分がいる。
風が気持ちいい。酔っ払うこともたまにはいい。
旅する天気でした。
本を読みたくなる天気でした。
糸島に帰ろう、家に帰ろう。
『 共に歌うのではない。互いに歌うのだ 』
早川義男( ミュージシャン )