無邪気な笑顔のおじさん。
バスで16時間かけて辿り着いたのは
「 サンティアゴ・デ・クーバ 」
という古都。
街のあらゆるところに歴史を感じる
キューバ革命発祥の地です。
事前にチェックしていた宿を
探し歩いていると、
小さな広場で仲間とお喋りをしていた
おじさんに話しかけられました。
「 どこを探してるんだ?」
宿の名前を告げると
いきなり言葉は英語に変わり
「 オレは昔アメリカに行ってたから
少し英語が話せるんだ。
宿まで案内してやるよ 」
これは後で
お金を請求されるやつだと思い、
大丈夫だよ、ありがとうと伝えると
「 心配すんな、
お金をもらおうとはしないから。
行こう、行こう 」
その話し方と
どこかで見たことのあるような
無邪気な笑顔に大丈夫だなと思い、
ついていくことにしました。
3分ほど歩くと宿に到着、
しかし部屋はまさかの満室。
「 よし、その向かいのとこも
いい宿だから聞いてやるよ 」
ところが再び満室。
「 じゃあ、
あっちの道のとこに行ってみよう 」
が、またもや満室。
おじさんはその後も
一緒になって探してくれ、
5件目にしてようやく空室の宿を発見。
「 おお、よかった!
じゃあ、またな!
いい時間を過せよ〜 」
おじさんは無邪気な笑顔を浮かべて
あっさりと去っていきました。
チェックイン後
ちょっとゆっくりしてから、
中心地に向かおうと道を歩いてると、
さっきのおじさんに遭遇。
「 セニョール!
さっきはありがとう!
これ、ちょっとしたお礼。
何種類かあるんだけど、
全部日本のお金なんだ。
全然高いコインじゃないんだけどさ。
よかったらもらってよ 」
するとおじさん、
あの無邪気な笑顔で
「 ええ、もらっていいのか〜!?
嬉しいよ!ありがとう!
これが日本のお金なのか〜。
スゴイな〜。
ほんとありがとな!!」
本気で喜んでくれてるのが
伝わってきて、
こっちもさらに嬉しい気持ちに。
しかも、
さらなる嬉しさを実感する出来事が翌日に。
道で出くわしたおじさんが
一目散にうちらに向かってきました。
「 おい、見てくれ、見てくれ、
お前たちとの思い出!」
見せてくれたカードケースの中には
プレゼントしたコインが!
おじさんよ、
それはあまりにも嬉しすぎるぜ…
中南米での忘れらない思い出が
またひとつ刻まれたのでした。
そして
サンティアゴ・デ・クーバを旅立つ日の朝。
奥さんと
「 おじさんと会えたらいいね 」
なんて言ってると、
初めて会ったときの広場におじさんが!
ほんとこの人とは縁がある。
「 セニョール!
うちら今日この街を出るんだ。
会えてよかったよ!
ほんとありがとう! 」
その後おじさんがボソッとひと言。
でもその単語の意味が
一瞬わかりませんでした。
「 チップ 」
ん………???
「 チップ、チップ 」
そこでやっと意味がわかりました。
これまでの自分の行いに対しての
チップが欲しいとのことだったのです。
このタイミングかーーーい
「 いやいや、
うちらはあのお礼と思って
日本のお金を渡したんだよ 」
「 そっか、でもチップをくれるか?
YES or NO?」
なんか納得のいかないこの展開、即答で
「 NOだよ、申し訳ないけどさ 」
するとおじさん、
いつもの無邪気な笑顔を浮かべて
「 オーケー、オーケー!
まったく問題ない!いい旅をな!」
ズッコケました。
深いです、キューバ。
さらなる思い出をありがとう、おじさんよ。
『 未来のために
今を耐えるのではなく、
未来のために
今を楽しく生きるのだ。』