Football × Journey = Pura Vida!

Pura Vida!とは中米コスタリカの挨拶でよく使われる「素晴らしい人生だよ!」の意味。

野性の目覚め。

 

東京帰省から戻った翌日

「 エリア伊都 」の小学4年生~中学3年生で

山口県遠征をしてきました。

 

試合会場は小学生と中学生で別々

泊まるところはみんな一緒という形で。

違う年代同士が交わる機会っていうのは

いつもと違う客観的な視点が働きやすくなって

個人的にはすごく大事だなと思っています。


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自分が担当したのは中学生たち。

 

秋の新人戦以降

2年生を中心にそこに1年生を加えて

練習試合ではメンバーを組んでいたのですが

クリスマス前、あまりに不甲斐ない試合があり

とてつもない危機感を覚えました。

 

勝ってるときや

自分たちのリズムでやれてるときに

できることは確実に増えているけども

劣勢の状況に追い込まれると何もできなくなる…

頭が真っ白になる…動けなくなる…諦める…

 

完全に「 野性 」が眠ってしまっていました。

 

でもこちらが煽って焚きつけるだけでは

その場は戦ったとしても必ず繰り返してしまう。

 

野性を自ら目覚めさせる、ことが必要でした。

 

そこで、2年生11人、1年生12人に加え

特待生として高校の進路を決めて

練習と試合に参加し続けている

3年生ふたりもメンバーとして考え

競争に加えることにしました。

 

ただ、ふたりを無条件に使うわけではなく

しかも1・2年生よりいいプレーをする

というだけでもアウトで

みんなが納得する圧倒的なプレーを見せること

それが試合に出られる条件だよ、との話をして。

 

チームとしても

 

「 声を出してプレーすること 」

「 球際の戦いに激しさとしつこさで挑むこと 」

「 足を止めずにゲームに関わり続けること 」

 

この3つを試合に出るうえでの最低条件に掲げ

そこができたかどうかを基準に先発メンバーや

交代のメンバーを選び、年末の試合をしてきました。

 

そして、年が明けての山口遠征。

 

練習試合の合間にやらせてもらった紅白戦

AチームがBチームに大差をつけて完勝しました。

 

満足げな表情でベンチに戻るAチームの選手たち

うなだれてベンチに戻るBチームの選手たち。

 

と、そのときにはBチームで出ていた

チームキャプテンの2年生が

Aチームで出ていた選手に軽く茶化されました。

 

 

 「 うるせえ!来んな! 」

 

 

キャプテンは怒りを露わに。

 

初めて見せた「 怒りの発露 」でした。

 

それからの彼は

ひとつひとつのプレーに芯のようなものが生まれ

力強さを感じさせる瞬間も増え。

 

なんか昔の自分を思い出しました。

 

 

 

 

拓殖大学を1年で中退して

19歳で渡ったブラジル。

 

サンパウロ州の田舎の田舎にあった

「 タナビE.C 」というチームが

サッカー留学生として受け入れてくれ

20歳以下の選手が所属する「 ジュニオール

というカテゴリーでプレーをしながら

そこでいいプレーをしたときには

プロの練習に呼んでもらう日々を送っていました。

 

1か月くらいが経ち

ホームスタジアムでジュニオールの練習試合が。

自分にとっては初となるブラジルでの対外試合。

 

監督から

「 後半から使うからな 」と言われていたので

ハーフタイムに他の交代選手と一緒に

ピッチでアップをしていました。

 

スタンドには観に来てくれていた町の友人たち。

 

 

 「 アリサーカ!

   頑張れ!楽しみにしてるぞ! 」

 

 

その心地いいプレッシャーに手を上げて応え

審判団も戻ってきて、いよいよ後半キックオフ。

 

と、味方選手が監督に向かって叫んでいました。

 

 

 「 監督!人数がひとり多いけど? 」

 

 

すると、監督はニヤリと笑いながら

 

 

 「 おい、日本人出ろ! 」

 

 

事情が飲み込めないまま、やむなくベンチに。

 

後半が始まって

まだ出ていなかったDFが25分くらいで入り

ラスト10分でGKも交代で入り、残るは僕だけ。

でも、使われそうな気配は

まったくもってありませんでした。

 

そのときに初めて事情が飲み込めたのです。

 

 

 「 この監督はもともと

   オレを使う気なんてなかったんだ… 」

 

 

その瞬間

これまでの人生で感じたことのない怒りが

一気に込み上げてきました。

でも、それをどうすることもできず

こぶしを握り締め、ただただ下を見ていました。

 

そのとき、審判の大きな笛の音が。

相手のファールで

味方選手がピッチに倒れていました。

 

監督に向けて

もうできないと手でバツ印を送るその選手。

 

すると、監督が僕の方を向き

心の底から嫌そうな表情を浮かべながら顎で

 

 

 「 行ってこい 」

 

 

1~2分プレーをして試合終了のホイッスル。

どんなプレーをしたかはまったく覚えていません。

 

覚えているのは試合後の

 

 

「 あの監督ふざけんな…

  絶対に見返してやる… 」

 

 

という怒りだけ。

 

でも結果

これで自分はいい方向に変われたのです。

 

それまでの練習で感じていた

不安や迷いみたいなものがなくなり

「 絶対にやってやる 」

という気持ちでいっぱいで

自分の特徴をためらうことなく出せる

意識しないでも自然と出せる状態になりました。

 

自分のなかの「 野性 」が目覚めた瞬間でした。

 

 

 

 

怒りや悔しさだけじゃ

絶対にサッカーはできないけれど

それがあることで、それが湧き上がることで

自分自身の可能性が広がるということも確かで。

 

頭の枠の外に出られるんですよね。

 

思考からの脱出。野性の目覚め。

 

けどそれはあくまで

自分の内側から湧き出してくるもので

うちら指導者が戦うことを

いくら煽って焚きつけたとしても

本格的な目覚めにはならないんだってことは

絶対に忘れないようにしないと…

 

そういう状態になるような

アプローチや仕掛けを

もっともっと想像できるようになりたい。

 

と同時に

怒りや悔しさの対極にある

楽しさや喜びが湧き立つような

アプローチや仕掛けも想像できるようになりたい。

 

そういう想像はきっと指導者に必要な

クリエイティビティのひとつだろうから。

 

キャプテンだけでなく他の選手たちにも

様々な感情の揺れが生まれてきているので

これから先どんな変化が見られるのか楽しみです。

 

野性を目覚めさせよう。

 

 

 『 夢の限界は自分の中にある。

   そこにたどり着く力は

   自分のハートの中にある 』

        シメオネ( Aマドリ―監督 )

 

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