Football × Journey = Pura Vida!

Pura Vida!とは中米コスタリカの挨拶でよく使われる「素晴らしい人生だよ!」の意味。

感動。

 

今年の夏の初め、

光葉の親友 “ みっちー ” が

糸島に遊びに来ていたとき、

ううちの本棚に並んでいた

一冊の文庫本をプレゼントしました。


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日本を代表する俳優・高倉健のエッセイ集。

 

10年以上前から

本屋で見つける度に気になっていたのですが、

今のタイミングじゃなさそうだなぁ、

と思い、ずっと見送ってきていました。

 

タイミングだと思えたのは昨年の10月下旬、

中南米ジャーニー 」へと発つ前でした。

 

 「 仕事を辞め、先のことも何も決まってない、

   このタイミングのような気がする 」

 

パウロ・コエーリョの『 アルケミスト

小田実の『 何でも見てやろう 』などと共に

バックパックに入ることが決まりました。

 

読んだのは、

旅を始めて数週間がたった頃、

キューバのバラデロというリゾート地の、

こんな綺麗な海が広がるビーチ、でした。


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とんでもなく心に染みこんできました。

平易な彼の言葉に込められた心。

 

そう、心が心に染みこんできた感じがしたのです。

 

アラスカを撮り続けた

星野道夫の『 旅をする木 』を

初めて読んだときと同じような衝撃でした。

 

中南米ジャーニーを経て、

最終的に糸島に移住することになったわけですが、

健さんの( 光葉とは敬意をこめてこう呼んでいます)

この本が与えてくれた心の潤いは間違いなく、

ひとつの影響を与えてくれたと思っています。

 

数日前みっちーから、

嬉しい手紙と共に本が返送されてきました。

( プレゼントだからって言ったのにー )

 

彼女が一番感動したという( 僕も大好き )

健さんの文章を紹介したいと思います。

 

 

 

 

 『 感動 』

 

  大晦日でした。

  母のために建てた小さな家が、

  九州の海辺にあった頃の話です。

 

  何年かぶりで、

  そこでお正月を過ごそうと思い、

  九州へ帰りました。

 

  夜、久しぶりに逢った仲間と食事をして

  「 いいお正月をお迎えください 」

  と挨拶して、みんな帰って行った後、

  僕はシャワーを浴びて、寝ることにしたんです。

 

  ボクのベッドルームは、

  押入れのような本当に小さなスペースに

  ヨットの船室を模して作って貰っているんです。

  屋根はガラス張りのスライド式で、

  寝転がると空が見えるようになっている。

 

  要は、

  米軍の組み立て式のベッドに寝袋だけみたいな、

  簡素なベッドルームなんですが、

  その晩飛び込んだら、

  スライド式屋根のゴムがいかれていて

  雨漏りしていたらしく、

  布団がびしょびしょに濡れていたんですね。

  あーあ、大晦日についてねえな、

  と思ったんですが、気を取り直して、

  もう一度シャワーを浴び直しました。

  夜中だからベッドは乾かせないし、

  本当に寝袋を出して

  寝る羽目になってしまいました。

 

  僕は暖炉の前で

  寝袋で寝るのが好きなんですけれども、

  それに入って暖炉の火を見ながら

  なんとなくテレビを付けたら、

  たまたま東映映画をやっていました。

 

  大好きな山下耕作監督の

  『 夜汽車 』という映画でした。

  これが、実に素晴らしい映画でした。

 

  東映を離れてから、この会社の映画を

  あまり観ていなかったんですけれども、

  後輩の小林稔侍君が、

  とってもいい仕事をしてました。

 

  たった一人、海辺の家で大晦日の晩に、

  暖炉の前で寝袋で寝転がって、

  退屈しのぎに眠くなるまで、

  と思って観ていたのが、物語の展開も、

  出ていらっしゃる俳優さんたちも素晴らしくて、

  気がついたら自分はいつの間にか正座して、

  映画が終わった時には拍手してました。

 

  住んでいる方が

  何人かしかいないというような、

  冬の別荘地の、それも土砂降りの雨の中の、

  大晦日の明け方の出来事でした。

 

  拍手している時は、

  我を忘れていると思うんですね。

  我を忘れているということ、

  そんなに心が高揚できるということは、

  素晴らしいことだなとその時に思いました。

 

  人間にとって一番寂しいのは、

  何を見ても、何を食べても、

  何の感動もしないこと。

  感動をしなくなったら、

  人間おしまいだと思うんですね。

  こんなに寂しいことはないと思います。

 

  人間にとっていちばん贅沢なのは、

  心がふるえるような感動。

  お金をいくら持っていても、

  感動は、できない人にはできません。

 

  感動のもとは

  何でもいいんじゃないでしょうか。

  美しいとか、旨いと感じるとか、

  一日に一回でいいから、

  我を忘れて、立ち上がって、

  拍手ができるようなことが

  あればいいですね。

 

  今の世の中で、

  こんな幸せなことはないんだと思います。

 

  一日に一回では、

  多すぎるかもしれません。

  一週間に一回でもいいですから、

  心が感じて動けることに出会いたい ー 。

 

  とても贅沢ですが、感じることを

  これからも探し続けたいと思います。

 

 

 

 

あ!!!!!!!!!!

 

たった今、

ほんとこの文章を打ってて気づいたのですが、

「 母のために建てた九州の海辺の小さな家 」

っていうのは、おそらく糸島のことだ・・・

 

福岡で知り合ったとても愉快な愉快な方が、

実際に健さんに招待されて糸島の別荘に

お邪魔したことがあるとおっしゃっていました。

 

うわーーーーー

 

キューバの海辺で読んで感動していた文章に

まさか数か月後に自分たちが移住することになる

糸島でのことが書かれていたなんて・・・

 

やっぱり、タイミングだったんだ。

 

感動!!!

 

健さんのこの文章を載せようと思わなかったら、

もしかしたら一生、気づいてなかったかもしれない。

 

みっちー、送り返してくれてグラシアース!

 

しかしこんなビックリなことを書くつもりで

このブログ記事を書き始めたわけではないので、

どう終わらせたらいいか、もはやわからない・・・

 

そうだ、本と一緒に「 2億円 」が送られてきました。

 

おかげさまでいきなり富豪になることができました、

健さん、どうもありがとうございました。

 

 

 『 何をしたかではなく、

   何のためにそれをしたか。

   そう問いかけることが、

   とっても大切な時が

   来ているように思えます。

   どんな映画を撮るかではなく、

   何のためにその映画を撮るのか。

   自分はこのことを

   とっても大切にしていきたいと思います 』

                高倉健( 俳優 )

 

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