子供ロマーリオ。
同学年のなかでは小さな身体、
みんなと違おうとするメンタリティ、
そして、小回りの利いたドリブル。
コーチをしている
「 エリア伊都 」の小学2年生に
ブラジルの英雄のひとり
“ ロマーリオ ” のような選手がいます。
子供ロマーリオ → 子マーリオ → コマーリオ
まぁ、似ているといっても、
“ コマーリオ ” はまったくもって悪童ではなく、
いつもニコニコしてるカワイイやつですが。
この日行われた練習試合でも、
本家ロマーリオばりのターン&ドリブルで、
何度も何度も密集地帯をかいくぐり、
GKとの1対1 の場面をつくり出していました。
でも、コマーリオはまだそこまで。
ことごとくそのチャンスを逃すことに。
そして3試合目となった、
「 エリア伊都 」同士のダービーマッチ。
ここでもコマーリオはチャンスを作るものの
やはり決められず、試合はラスト1分。
カウンターからひとり抜け出しビッグチャンス!
ところが、
「 R・マドリ― 」の “ カゼミーロ ” ばりの
ボール奪取能力を見せる “ コゼミ―ロ ” が、
猛烈なスピードで戻ってきて激しいチャージ。
吹っ飛ばされるコマーリオ。
しばらく起き上がれず顔は伏せたまま。
近くに寄って行ってみると、泣いちゃってました。
みんな駆け寄って来て、
「 コマーリオ、大丈夫~? 」
コマーリオの表情を見たら、
ちょっと心が折れそうな感じだったので、
主審をやっていた僕はすかさず、
「 コマーリオだから大丈夫!
今からコマがFK蹴るから、
みんなポジションについてー 」
そして、コマーリオの耳元で、
「 最高のドリブルだったぞ、コマ。
いいか、思いっっっきり蹴るんだぞ 」
涙を必死にこらえたコマーリオの渾身のキック!
これまで見たことのない
強いキックになりましたが、
残念ながらボールはGKの正面でした。
それと同時に、タイムアップ。
不機嫌な表情でベンチに座るコマーリオ。
少し痛めた肩をアイシングしながら、
みんなから「 大丈夫?大丈夫? 」の嵐。
ちょっと見守ることにしました。
そして、1試合空いて最後の試合。
前半を終えて 0対2 とリードされてしまいました。
じつはここまでの3試合、
散々チャンスを作りながらも、
1点も取れていなかったコマーリオ。
「 コマ、最後だから1点とってこいよ! 」
あえて強い口調でそう言うと、
不機嫌な顔ながら本当に軽ーく頷きました。
後半、ビックリしました。
こっちの予想をはるかに超えるプレーを披露。
ボールを奪いに来る相手の動きを
軽やかにいなしたドリブル突破から
立て続けにゴールを決め、
なんと、わずか3分ほどでハットトリック!!!
こんなビックリなタイミングで
ハットトリックをかましちゃうって、
試合は結局 4対2 で逆転勝ち。
最後の記念撮影では、
さっきまでの不機嫌な表情は消え去って、
いつものおどけた表情を見せる
コマーリオに戻っていました。
『 子供の頃、
俺よりうまい奴はたくさんいた。
でも彼らはきっと、
自分を信じることができなかったのだろう。
俺は自分を信じた。
幸運はやって来るものじゃない。
自分で探して追いかけるんだ 』
ロマーリオ( 元ブラジル代表 )