旅の出逢い。
キューバの首都
ハバナの長距離バスターミナル、朝7:00。
バスで5〜6時間かかる目的地
「 トリニダー 」へのチケットは
前日に完売してしまったのですが、
キャンセル待ちできるということで
朝早くにやって来ました。
ところが
いざバスターミナルに来てみると、
僕も奥さんもなんかモヤモヤ。
行きたい場所に対しての気分が
変わってきてしまいました。
「 せっかくなら行っちゃう?」
「 よし、行っちゃおう 」
そして目的地は、
バスで16時間かかるキューバ東部の街
「 サンティアゴ・デ・クーバ 」へと変更。
ここには
もともと行こうとは思っていたのですが、
なにせ遠いので途中の街を巡りながら、
刻んで刻んで向かおうと考えていました。
でも
「 16時間のバス移動の
予測できない感じも惹かれるなぁ…
しかもキューバで… 」
結局その気持ちが
お互い上回ってしまい目的地変更、
チケットも無事に購入できました。
出発は15:00だったので
待ち時間は8時間ほど。
待ち合い室でノンビリ待つことにしました。
奥さんが持ってきた、
谷川俊太郎さん、高田宏さん、
よしもとばななさんの対談集
『 ことばを生み出す三角宇宙 』を。
「 ぼくなんかでも、
わりと枠があったほうが
書きやすいところがあって、
題名が決められたり、
行数が限られているほうが
やりやすいとか、
それと同じようなことだと思います。
形というか器みたいなものが
必要だということは、
文章の上でもなんの上でも
必ずあると思うんです。」
意外だった谷川さんのその言葉。
顔を上げると
待ち合い室のテレビでは
スペインリーグの
「 バルセロナ vs マラガ 」
の試合が放送されていました。
確かにバルセロナにも器がある。
その器があるからこそ
余計な迷いがなくなって、
一人ひとりのパーソナリティが
より輝くんだよなぁ。
縛りつけるためではない、
より広がっていくための、
より自由になっていくための器は
今の日本だとどの分野であるんだろう…
「 日本人の方ですか?」
ふいに声をかけられ、
そちらを見ると
年配の日本人の男性と女性が。
「 どちらに行かれるのですか?」
そこからいろいろな話しになりました。
仕事は少し前に
リタイアされたということ、
1年に数回ご夫婦で
外国への旅に出るということ、
ツアーの旅は耐えられないということ、
辺境の地ほど行ってみたいということ。
僕たちも
自分たちの話しをするとご主人は
「 へぇ、似た者同士だね、嬉しいなぁ。
もしまだ時間あるなら、
そこの食堂で朝食でも
一緒にどうですか?」
そしていたずらっぽい笑顔を浮かべ
「 大丈夫、
お金はいっぱい持ってるから(笑)
ぜひぜひごちそうさせてください 」
みんなで食堂に移動して、
あらためて自己紹介を。
そして4人分のキューバサンドを注文。
「 ビールは飲めます?
せっかくの出逢いだから
乾杯しましょうよ 」
「 Bucanero 」という
キューバビールで乾杯。
その後も
それぞれの人生や旅のいろいろな話しを。
ビールを次々にお代わりしながら。
しかも早朝に。
楽しかったなぁ、ほんと楽しかった。
予期せぬ出逢い、予期せぬ展開。
まさに旅の醍醐味のひとつ。
「 この人(ご主人)は
飛行機でもバスでも
必ず窓際の席にすぐ座るんです。
で、飽きずにずーっと
外の風景を眺めてるんです 」
「 いや、だってさ、
うちらの見たこともない世界が
そこに広がってると思ったら、
それはやっぱ見たいじゃん、
見逃したくないじゃん。
オレは見たことのない世界を
これからもずっと見ていきたいんだ 」
気づけば、時間は10:00過ぎ。
おふたりのバスの出発が迫っていました。
「 もしよかったら、
僕の連絡先を渡してもいいですか?」
その申し出にご主人は
「 いやいや、
これは旅の出逢いってことで。
縁があれば、
きっとまたどこかで逢えるよ 」
そして、
まだしばらくバスを待つ僕たちのために
持ち帰り用のキューバサンドとビールのお代わりを置いて
「 どうもありがとうね、
ほんと楽しかった! 」
と颯爽と去っていったのでした。
どうもありがとうはこちらこそ。
また世界のどこかで!
『 旅人の目的地は場所ではなく、
世界を見る新しい視点だ。』
ヘンリー・ミラー(作家)