Football × Journey = Pura Vida!

Pura Vida!とは中米コスタリカの挨拶でよく使われる「素晴らしい人生だよ!」の意味。

ただただ嬉しき再会。


その当時は

あまり感じていなかったけど、

振り返ってみると、

とんでもないことが起きてたんだな、

ということが人生ではたまにある。


ボクのなかでのそれは、

2002年に起きた出逢いでした。


「 もう一度選手として挑戦してみたい 」

「 もう一度外国に住んでみたい 」

との思いが湧き、

選手として5年プレーしていない、

スペイン語は喋れない、

知り合いはひとりもいない、

そんなナイナイづくしのまま

コスタリカに渡り、数ヶ月が経った頃。


日本人家族の助けで

アパートを借りられることになり、

ベレンという町に移り住むことになりました。


そのときはまだ、

契約できるチームが見つかっていない、

言わば浪人の身。


移り住んですぐ、

トレーニングのために

町中にランニングへ出ました。


旅でもそうですが、

初めて訪れた場所を

ランニングすることは心身のためだけでなく、

その町や人の様子を知ることができて

まさに一石二鳥。


このときもそう、

ベレンの様子を肌で感じることが

できていました。


しばらくすると、

綺麗な白い教会と

芝生の広場がある町の中心地へ。


そこではおじさんたちが集まって

草サッカーが行われていました。


「 入ってもいい? 」


見知らぬ東洋人のその言葉に


「 もちろん!入れ、入れ! 」


当たり前のようにこう言える

スタンスってほんと素敵。


さっそく混ぜてもらい、無我夢中な1時間を。


「 毎週火曜日と木曜日の

     12:00からやってるからまた来いな 」


そう言ってもらい、

みんなと握手をして、

ゆっくりとランニングをして

家へと帰りました。


翌日の水曜日。


同じグラウンドをランニングしていると、

草サッカーを仕切ってるおじさんが現れました。


「 おお、元気か?

     ところで、何で走ってるんだ?」


その質問に


 「 じつはこの国で

      サッカーをやりたいんだ。

      だからこの国に来てるんだ 」


と言うと、

おじさんはニコリとして


 「 そうなのか!

      オレは直接助けてやれないけど、

      今度友達を連れてきてやるよ。

      彼ならきっと助けてくれる。

      オレの名前はラファ、よろしくな 」


自分の名前を告げ、

握手をして別れ、

ボクはまたランニングを続けました。


そして木曜日。


草サッカーに参加、

13:00になり終了すると、

ラファに呼ばれました。


隣には見たことのない、

ただならぬ気配を放った男が。


 「 テツ、友達を連れてきたよ。

      彼の名前はマウリシオ。

      コスタリカの元代表選手で、

      1990年のイタリアW杯にも出場した人だよ 」


マウリシオは人懐っこい笑顔で


 「 はじめまして、

      話しは聞いてるよ。

      コスタリカでサッカーを

      やっていきたいんだって?

      今オレは2部チームで監督をやってるから、

      とりあえず練習に来ないか?」


もちろん参加させてほしいとの返事を。

そしてその日の夜にあった練習に参加、

プレーを認めてもらい、

継続して練習参加させてもらう

許可を得ることができました。


そこから数ヶ月

たくさんの紆余曲折があり、

そのマウリシオのチームと契約。

1シーズンプレーすることになったのでした。


後から知ったのは、

マウリシオが引退してからも

CMに出るような国民的英雄だったこと。


そんな人が

草サッカーを観に来てチームに誘ってくれ、

契約まで話しをしてくれたこと。


本当にとんでもないことが起きてたんだなと

コスタリカを離れてから強く強く思いました。


そして先日、

そのすべてのきっかけとなった

草サッカーに参加できたら

と誰にも連絡をとらずに

ベレンに行ってみました。


グラウンド脇のベンチに座って待っていると、

遠くからサッカーの格好をした

スキンヘッドのおじさんが。


あの走り方は間違いなくそうだ。


やはりラファでした。


 「 おお、テツ!!!

      何でここにいるんだ!?

      何年ぶりだよ、元気だったか!?」


 「 ここの草サッカーはあれから

      参加人数も少なくなっていってるんだよ。

      ガンとかで亡くなってしまった

      人たちもいてね。

      テツ、今日もちろんやるんだよな?」



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久しぶりなボール蹴りで

呼吸が苦しかったけど、

10年以上経ってもまだ

同じ場所で草サッカーが行われていたこと、

ただただ嬉しすぎでした。


ラファが相変わらず

誰よりも早く来て

ウォーミングアップをしてることも。


そして何より、

あのときと同じように

ボールを蹴り合えたことも。


お互い10歳以上年をとって

動きにキレがなくなっていたけど、

そんなことはどうでもいい。


10年以上経っても

変わらないものがあったのだから。


ラファ、ありがとう。



  『 人生はからくりに満ちている。

       日々の暮らしの中で、

       無数の人々とすれ違いながら、

       私たちは出会うことがない。

       その根源的な悲しみは、

       言いかえれば、

       人と人が出会う限りない

       不思議さに通じている。 』

                             星野道夫(写真家)



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